C型慢性肝炎・肝硬変の検査と診断

専門医に聞く

C型慢性肝炎とその治療について、患者さんまたは日ごろ自分の健康に関心のある方が知りたいこと、疑問に思うことなどについて、豊富な治療経験をお持ちのお2人の肝臓専門医、国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 分院長 熊田博光先生と大阪大学 名誉教授/関西労災病院 病院長 林紀夫先生にお話をいただきました。


C型慢性肝炎はどのように診断しますか?
肝機能検査[AST(GOT)値、ALT(GPT)値]と各種ウイルスマーカーを用いた検査によって、C型慢性肝炎であるかどうかが診断されます。これらの検査はいずれも血液を調べるだけでわかる簡単な検査です。

専門医からのコメント

熊田 :
肝機能[AST(GOT)値やALT(GPT)値]の異常が6ヵ月以上続き、かつ血液中のC型肝炎ウイルスの抗体(HCV抗体)が陽性で、ウイルスの遺伝子(HCV RNA)の検査が陽性のときに、C型慢性肝炎と診断されます。AST(GOT)値やALT(GPT)値に異常がなくても、血液検査でHCV抗体が陽性でその値が高い、あるいはHCV RNAの検査が陽性のときは、C型肝炎ウイルスのキャリア(持続感染者)ということになり、定期的な検査など十分な健康管理が必要になります。

AST(GOT)値、ALT(GPT)値とは何ですか

林 :
体のほとんどの細胞の中に含まれている代謝酵素ですが、とくに肝細胞に多く含まれています。炎症などで肝細胞が壊れると、血液中に流れ出して血液中の値が高くなることから、肝細胞がどの程度壊れているかの目安となるため検査に利用されます。基準値は医療施設によって多少異なりますが、 AST(GOT)値は40IU/L以下、ALT(GPT)値は30IU/L以下です。C型慢性肝炎では、B型慢性肝炎に比べるとAST(GOT)値や ALT(GPT)値は低い傾向にあり、とくに初期には正常と異常の間を変動しやすく、1回だけでなく何回か検査をすることが大切です。

ウイルスの遺伝子検査とは何ですか

熊田 :
C型肝炎ウイルスはRNAという遺伝子をもっており、これを調べることで体の中にウイルスがいるかどうかわかります。HCV抗体が陽性でもウイルスRNAが陰性の場合は、過去に感染したことがあるけれども現在は治っている状態ということができます。
ウイルスのタイプの検査とは何ですか
林 :
C型肝炎ウイルスの遺伝子にはいくつかのタイプがあり、これを遺伝子型(ジェノタイプ)といいます。1型(1a、1b)、2型(2a、 2b)などのタイプが知られていますが、わが国では1b型が約70%と多く、2a型が約20%、2b型は10%以下で、1a型の人はほとんどいません。 1b型はインターフェロンが効きにくいタイプであることがわかっています。
C型肝炎のウイルス検査
C型肝炎のウイルス検査
肝炎の進行の度合いはどのように調べますか?
肝硬変と慢性肝炎の判別はAST(GOT)値/ALT(GPT)値の比、血小板や肝予備能などの検査、そして超音波、CT/MRIなどの画像検査によって総合的に判断します。

専門医からのコメント

林 :
肝炎がどの程度進んでいるか、肝機能がどのくらい保たれているかを知ることは治療計画を立てるうえで重要です。AST(GOT)値やALT(GPT)値がそれほど高くない場合でも、肝炎が進行している場合があり、血液検査や画像検査などで肝臓の状態を調べます。

肝硬変に進行しているかどうかはどのように診断しますか

熊田 :
慢性肝炎と肝硬変は一連の病気で、はっきり分けることはできませんが、判別において最も一般的な点はAST(GOT)値とALT(GPT)値の比をみることです。肝硬変ではALT(GPT)値に比べてAST(GOT)値が高いことが多く、慢性肝炎ではその逆です。血小板が10万/mm3以下の時も肝硬変の可能性が高くなります。ほかにヒアルロン酸検査や色素を注射するICG試験などがありますが、いずれも絶対ではなく、画像診断を含めて総合的に判断しないと、思わぬときにがんが出てしまうことになりかねません。
林 :
とくに高齢者では血小板数が低いからといって肝硬変とは限りません。プロトロンビン、ヘパプラスチンあるいは血清アルブミンなどの肝予備能から総合的に判断すべきです。

画像診断にはどのようなものがありますか

熊田 :
いちばん簡便なのが超音波検査ですが、機械がよくなってもやはり見落としがあるので、CTあるいはMRI検査を組み合わせるべきでしょう。しかしこれも肝硬変を確実に診断するものではなく、慢性肝炎と肝硬変の間の病変はすべて肝硬変と考えた方が無難です。

肝炎の進行度合いを調べる検査

血液検査

検査項目 検査の意義 肝硬変の疑い
AST/ALT比
(GOT/GPT比)
肝硬変では上昇することが多い。肝炎ではその逆。 2.0以上
(肝炎0.6前後)
血小板 血小板は血液の成分の1つで、肝炎や肝硬変の進行とともに数が減少する。 10万/μL以下
肝予備能 血清アルブミン 肝臓で作られる蛋白質。肝障害の進行とともに低下する。 3.5g/dL以下
プロトロンビン試験
ヘパプラスチン試験
プロトロンビンもヘパプラスチンも肝臓で作られる血液凝固因子。肝臓の障害が進むと低下する。 50%以下
ICG試験 肝臓で処理されるICG(インドシアニングリーン)という色素を注射。肝機能が低下していると、処理が遅れ、色素が血液中に滞る。 30%以上

画像検査

超音波検査(エコー):障害物に当たるとはね返る超音波のしくみを利用した検査。肝臓の形や内部の変化が観察できます。最近では造影剤を用いてより詳しい検査ができるようになりました。

(写真)慢性肝炎、肝硬変

〔提供 林紀夫(大阪大学 名誉教授/関西労災病院 病院長)〕


CT(コンピュータ断層撮影)検査:X線とコンピュータを組み合わせた装置で、肝臓を輪切りにした画像が得られます。超音波で観察しにくい部位まではっきりと映し出します。

MRI検査:磁石と電磁波を利用して体の内部を撮影する装置。CTより鮮明で、いろいろな断面で肝臓を見ることができます。

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